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ABOUT


1928年、日本にはじめての国立の「デザイン研究所」が宮城県仙台市に設立されました。 それまで日本の国家産業の一つの軸であった「美術工藝」の新しい時代に対する振興、すなわち「産業工藝(工業)」への転換のため、デザインや素材、技術の研究開発が、全国から集められたトップレベルの技術者たちにより約41年間に渡り行われました。 ブルーノ・タウトやシャルロット・ペリアンなど当時の世界的なデザイナー、建築家に「デザイン」を学んだ工藝指導所は、民間企業へお手本(Mustermodell)となるデザインの試作品を数多く残しました。 MUSTERMODELLは、当時の試作品の中から現在の暮らしでも色褪せない普遍的なデザインを「復刻」し、日本のプロダクトデザインの原点とも言える「工藝指導所」の歴史や価値を広く伝えていきます。





HERITAGE


商工省工藝指導所(以下、工藝指導所)は1928年から1969年までのおよそ41年間に渡り、全国トップレベルの木工・漆工・金工などの技術者を集め、新しい時代のために日夜、デザインや技術の研究開発・世界のデザイン動向の発信も行ってきました。 工藝指導所からは、日本のモダンデザインの中核を担っていた剣持勇や豊口克平、乾三郎や秋岡芳夫、芳武茂介といった多くの優秀なデザイナーを輩出しました。 日本がまだ、企業の中にデザイン部門を掲げる前の時代において、工藝指導所が主導でデザイン研究にあたり、新しい時代のデザインのお手本となるものを開発しては、教育普及や輸出振興を行っていました。

しかしながら、このような重大な歴史を持つにもかかわらず、所在地であった仙台市においても、その存在を知る人は数少なく、またデザインの歴史文脈においても、その存在感は薄い状態です。大きな要因としては、1969年以降、組織が解体され、現在ではその足跡を辿るものがほとんど残されていないことが挙げられます。 また、工藝指導所の遺構や記録は数少なく、またそれらを研究し歴史をつなぐ人材の少なさも要因の一つです。 貴重な当時の試作品や資料は250点ほど残っていますが、全て仙台市の東北歴史博物館に収蔵されているため、一般の人々がアクセスすることのハードルが高いという現状もあります。 日本のプロダクトデザインの原点でもあり、歴史的に重要な意味を持つ工藝指導所の存在を、未来に繋ぎ、これからのデザインや工芸のあり方を考える一つの土台となることをMUSTERMODELLは目指しています。

工藝指導所の直接的な系譜を引く組織は、残念ながら現在ではありません。 仙台市の「国立研究開発法人 産業技術総合研究所 東北センター(通称:産総研)」がルーツを引き継ぐ組織として活動していますが、当時のようなデザイン研究は行われてはおりません。産総研が工藝指導所時代の資料や試作品などを引き継ぎ、現在では東北歴史博物館に移管され、収蔵保管されています。







CANISTERキャニスター

サイズ (シェイプ - 写真左):φ90, H185.5 mm, 約250ml
サイズ (テーパー - 写真右):φ95.5, H185.2 mm, 約400ml
素材:ブナ積層合板 / 植物油性バニッシュ仕上げ
販売金額:¥36,300 (tax incl.)
製造:木地 (株式会社天童木工) , 加工 (佐賀木工) , 金属取手 (株式会社東北マテリアルス)

*受注生産となります。納期はご相談ください。
*販売金額や製造業者は都合により変更になる場合がございます。

1950年代後半に製作されたと考えられる「人工木目」技法による木製キャニスター。 当時の図面や製作意図、使用用途などの資料は残っておらず、同種の試作品資料が数点残っているのみでした。 「人工木目」技法とは、積層合板の接着層に着色を行うことで、切削時に木目のような模様が現れることを利用したものです。この技法が研究された背景には木目の美しい高級な木材資源の枯渇や、無垢材の持つ材質の不安定さ、といった課題を解決するために生まれたものでした。 本製品は、天童木工にて成形合板の技術を確立した乾三郎(同社技術部長も勤める)らが工藝指導所の所員時代に研究を担当したという記録が残っています。 当時の記録から、キャニスターだけでなく木製皿や家具などにも応用を検討していたことが伺えます。 復刻にあたって、積層合板の制作には天童木工様にご協力をいただきました。

*現存する試作品資料とできる限り寸法や素材を再現しています。
*シェイプタイプに関しては、人工木目材による試作資料は残っておりませんが同時期にシリーズとして製作されていたと推定し復刻。






WOODEN BOWLウッドボウル

サイズ:W120.7, H56, D121.2 mm, 約400ml
素材:ケヤキ / ウレタン塗装
販売金額:¥22,000 (tax incl.)
製造:木地 (宮城県産ケヤキ材)、加工 (株式会社ウッドマイスター)

*受注生産となります。納期はご相談ください。
*販売金額や製造業者は都合により変更になる場合がございます。

1950年代前半に製作されたと考えられる「非円形ろくろ加工」によるウッドボウル(銘々皿)。 当時の図面や製作意図、使用用途などの資料は残っておらず、同種の試作品資料が数点残っているのみでした。 工藝指導所は、木製器の形状の自由度(意匠性)を高めるべく、通常のろくろ加工(木工旋盤加工)では円形の形しか作れなかった課題を克服するために、「非円形ろくろ」という加工機(旋削機)を開発しました。それにより、三角形や四角形・楕円形などの形状を量産的に作れるようになり、多くの規範原型(見本試作)を製作していました。 しかしながら、機械を使用する際の安全性や安定性の課題から、実際に普及すること難しかったのではと考えられており、いつしかその手法は忘れられてしまいました。今日においては、CNC切削(コンピュータ制御切削)によって、より自由に形状を作ることが可能となりましたが、今から70年以上も前に知恵と工夫で、器=円形であるという常識を越えようとした、工藝指導所の先見性や技術力の高さを物語る製品として、復刻を行いました。

*現存する試作品資料とできる限り寸法や素材を再現しています。
*ケヤキは着色せずに本来の木地色を生かしていますが、ロットによって色の差がある場合がございます。




COLOPHON


(参考文献)

1. 「叢書・近代日本のデザイン第29巻 『産業工芸試験所30年史』(2010)」 工芸技術院産業工芸試験所 , 著者: 森仁史, 発行: 株式会社ゆにま書房
2. 「特別展 工芸継承 東北発、日本インダストリアルデザインの原点と現在 (2018)」, 編集: 日高真吾, 小谷竜介, 発行: 国立民族学博物
3. 「モダンリビングの夢 産業工芸試験所の活動から (2017)」, 発行: 武蔵野美術大学 美術館・図書館, 武蔵野美術大学 造形センター
4. 「ブルーノ・タウトの工芸 (2013)」, 執筆: 庄子晃子, 田中辰明, 発行: LIXIL出版
5. 「タウト全集第3巻 美術と工藝 (1943)」, 編者:篠田英雄, 発行: 育生社弘道閣, 編著: 緑の椅子リプロダクト研究会
6. 「ブルーノ・タウトの緑の椅子: 1脚の椅子の復刻、量産化のプロセス (2018)」, 出版: Opa Press
7. 「シャルロット・ペリアンと日本 (2011)」, 編集: 「シャルロット・ペリアンと日本」研究会, 発行: 鹿島出版会
8. 「ジャパニーズ・モダン 剣持勇とその世界 (2005)」, 編者: 森仁史, 発行:株式会社 国書刊行会
9.  「型而工房から 豊口克平とデザインの半世紀 (1987)」, 編集:グルッペ5, 発行: 株式会社美術出版社
10. 「産総研 TODAY 2005-06 産総研が受け継いだ“ものづくり”の足跡 1,2」, 発行: 産業総合研究所東北センター
11. 「通産省 工業技術院 製品科学研究所訪問記1970」, 著:高橋儀作
12. 「工芸指導所初期の人々 一ブルーノ・タウトを囲んだ1枚の写真をめぐって一 (1998)」, 著: 庄子晃子, デザイン学研究特集号 vol.6 no.2 p49-51
13. 「産業技術総合研究所東北センターにおける「工芸試作品展示室」の開設 ―工芸指導所東北支所および産業工芸試験所東北支所時代の成果の紹介― (2005)」, 著: 庄子晃子, 日本デザイン学会 第52回研究発表大会 p76
14. 「商工省工芸指導所の仙台本所時代の東北工芸産業振興策 (1994)」, 著: 庄子晃子, デザイン学研究特集号 vol.2 no.1 p6-9
15. 「着色積層板による木工芸品 (1957)」, 著: 乾三郎, 木村一正, 発行: 工業技術院産業工芸試験所
16. 「interview 産総研東北のルーツと歴史 (2021)」, 宮城の新聞, https://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20210830-4.php
17. 「工芸ニュース 20巻 4号 (1952)」, 編集: 工芸技術庁工芸指導所
18.    「ブルーノ・タウトの1934年3月5日付文書の翻訳と検討 : 『仙台の工芸指導所のための私のこれまでの仕事に関する報告』について (1997)」,  著: 庄子晃子, デザイン学研究 44 (3), 51-58

(協力者)

東北歴史博物館
国立研究開発法人 産業技術総合研究所東北センター
仙台市 クリエイティブプロジェクト助成金 (令和3年度活動費)
株式会社 天童木工
株式会社 ウッド・マイスター
株式会社 東北マテリアルス
佐賀工芸
庄子 晃子 (東北工業大学 名誉教授)
近藤 祐一郎 (東北工業大学 教授)
宮城野区榴ケ岡市民センター
東北工芸製作所
有限会社 モノ・モノ
公立大学法人 宮城大学

*インタビューや講演・資料提供などの協力を含む






MUSTERMODELL

「Mustermodell」とは、ドイツ語で「お手本」「見本」「試作」といったことを意味する単語です。 工藝指導所のデザイン基盤を築いたドイツ人建築家 ブルーノ・タウト(Bruno Julius Florian Taut , 1880-1938)に敬意を表し、彼が伝えた「規範原型」というデザインの手法(現在のデザインとほぼ同等の、リサーチ / 試作 / 評価 / 完成 といったプロセス)から、本プロジェクトの名称を名付けました。タウトの伝えた「規範原型」や「見る工芸から使う工芸へ」といった手法や思想がその後の工藝指導所の理念や基礎となり、日本のモダンデザインの発展に大きく貢献していきました。 現在は、工藝指導所の活動をよく伝える資料として当時の「試作品資料」があります。残念ながら普段は博物館に収蔵されてしまっていますが、私たちはそれを現代の技術で復刻し、「(当時の)試作」の「見本」を持って、工藝指導所の価値を広く一般に伝えていきます。


This project run by Daichi Komatsu from TORCH with Kogei Shidosho heritage.© 2024 MUSTERMODELL. All rights reserved.